Eコマースによる食品流通

オイシックス株式会社副社長 福井栄治氏
■ オイシックスの設立から現在

 私は総合商社でオーガニックの食品に携ってきて、昨年からインターネットを通して減農薬の農産物や、化学調味料や添加物を使わない加工食品を販売するビジネスをスタートさせました。インターネットによる流通・販売は、従来の電話やFAXによるものと何が違うのか?また、何を違えなくてはいけないのでしょうか。
 インターネットは「大量の情報を」「不特定多数に」「リアルタイムで」、「比較的安価に」「双方向で通信できる」道具です。従来のBtoB(Business to Business)では売り手と買う側の双方に、新たなヴァリューは生まれませんが、ネットを使えば、BtoC(Business to Consumer)でなければできないことが可能になります。コンシューマーのニーズに24時間体制で、2時間以内のレスポンスができるということですね。
 オイシックスのキーワードは「商品の品質と安全性」、「徹底したパーソナルサービスを提供する」の2つです。北海道から沖縄までの自然の恵みを大切にして土を育て、減農薬に努力している1000余りの農家と、化学調味料や添加物を使わない食品加工生産者の協力を得て、ベストな状態の、美味しくて安全な食材をお届けしています。商社では初めてオーガニックを取り上げました。うちの食材は、農水省のガイドラインに基づく「減農薬・減化学肥料」以上のものですし、すべての食材の栽培期間中に、栽培カルテに基づいた安全性や品質チェックが厳しく行われています。
 多彩な商品の中から単一アイテムを選んで注文できることも特徴です。従来の産直運動では、ある特定の産地と契約すると、一定期間中に限られた食材しか収穫できないということがあります。いくら低農薬のキャベツが美味しいからといって、キャベツばかり送ってこられては、消費者も困りますよね。当社の商品は旬の野菜セットでも和と洋が選べるし、朝食セットや手作り離乳食セットもあります。申し込むときに、配達の日時も指定できます。

■ インターネットでなければできないこと

 日本人のように顧客ニーズが多様化しているところで究極の顧客満足度を得るには、One−to−Oneの対応しかないでしょうが、あるスーパーの試算によると、顧客の家族構成、嗜好などの個人情報をデータ化して販売戦略を作り上げるには、1店舗で年間600万円の経費がかかるとされています。これを、比較的安価に可能にするのがネットなのですね。
 ネットによるショッピングは、いわば半径数キロ内の顧客を相手にしているようなもので、スピードが勝負です。仮に、すばやく検索したいショッパーはY社を使うとしましょう。Y社で検索した人がうちの商品をどれだけの率で購買したかというデータは、比較的簡単に出せます。当社のメールマガジンは毎月45000〜50000通くらいの「読者」がいますが、ここからの購買率が最高なのです。掲示板を通しての双方向のコミュニケーションも円滑なビジネスに大きく役立っています。
 ネットビジネスで一番重要なのは、顧客ロイヤリティーをいかに高めていくかということです。実は当社のネット利用の顧客のリピート率(先月買った人が今月も買うリピート率ですが)は40%を超えています。ネットサーファーと呼ばれる顧客が大多数を占めるなかで、この数字は驚異的といえるでしょう。

■ ネットビジネスの課題

 当初、消費者ニーズがここまで多様化している日本という国で、ネットを使って食品をオーダーするニーズが本当にあるのかなという気持ちもありました。ところが、実際スタートすると、我々は都市型の消費者を予想していたのですが、地方からの要望が非常に多かったのです。今後、社会のネット化がますます進めば、高齢者の方々のディマンドも増してくると思います。それに対して、食材だけの供給ではたしてよいのか。Ready−to−eatへのニーズも当然出てくるでしょう。これらのニーズにどうやって対応するかも今後の課題です。

(まとめ:関根悠子)
2001/07/18 2001年度 第1回 JFJ勉強会より