放射線の食品照射は、もともと1952年ごろからアメリカで原子力の平和利用という形で行なわれ始めたものです。はじめは軍用食料品として開発がすすめられ、次第にスパイス、生鮮野菜と一般へも広まっていきました。1986年、アメリカで大きく問題となり、1994年には同じくアメリカで、照射イチゴの販売開始に際し、消費者から反対運動から起こっています。このような相次ぐ反対の動きにもかかわらず、アメリカでは、肉類についても、1985年に豚肉、1990年に鶏肉、1997年に牛肉への照射が認可されています。
食品への放射線照射は、殺菌、殺虫のために行なわれるものです。問題とされるのは、放射線照射によって生成される物質(放射線照射生成物)が有害なのではないかという疑いがもたれる点です。実際にラットの研究で卵巣の重量に変化が見られたり、死亡率が増加したという結果があります。さらに懸念されることは、照射食品は、食品添加物や残留農薬の問題とは異なり、過去に照射が行なわれた食品かどうかという検知法がないということです。
生鮮食品だけでなく、冷蔵、冷凍食品にも適用できるということ、食品が長持ちするということで、放射の効力は万能のように思われがちです。しかし実際には、放射による殺菌、殺虫の効力はその場限りであり、たとえば、照射のあとに再び虫がつくということもあり得ます。
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