今こそ食育を!

砂田登志子氏(JFJ会員)
■食育グッズに衝撃!

 30年ほど前「ニューヨークタイムズ」にいたころから、食育に関心を持っていたの。ニクソンショックの時、1973年に「ニューヨークタイムズ」をやめて、「ボストン・コンサルティング・グループ」に入って、フルタイムで食育を仕事にしようと思ったのね。アメリカでは、フードジャーナリストが評価されているの。会社にとっても、トレードマークになっているのね。
 ところが、日本の新聞は「食」をはじめとする生活情報ページが少なすぎる。そこで、岸さん、村上さん、中村さんによびかけて「JFJ」を作ったのね。 
 欧米の食育のポスターやCD―ROM、ビデオ、パンフレットを見ると、日本と全然違うの。どこが違うかというと、子どもに直接呼びかけているの。しかも、タレントや医者などは使わないの。そういう教材の働きかけをするのが、フードライターズ、フードエディターズなの。
アメリカでは、1944年に17〜18社のフードエディターがシカゴに集まって、アメリカの食生活ジャーナリストの会を作ったのね。その50周年記念に発表された食育グッズで最も話題になったのが、三十数種類もの野菜が歌って踊るCDソフト。たとえば、バナナは「ボビー」パイナップルは「パメラちゃん」というように名前がついていて、マウスでバナナをクリックすると、「僕をおやつに選んでね。僕を食べると便秘にならないよ。」と、スケートボードに乗りながら、直接子どもに呼びかけるわけ。そこに衝撃を受けたのね。21世紀、日本でも、こういうものを作りたいわね。

■おむすびの「むすびちゃん」

 そこで日本でも、直接子どもによびかけなくてはと思って、「おやさい・こやさい」という野菜グッズを作ってみました。きょうも私、たくさん付けてきたでしょ。ほら、みんな目があって可愛いでしょ。これをつけていくと、子ども達は目を輝かせて集まってくるの。触りたがって、そして欲しがるの。
たとえば、おむすびの「むすぶくん」。妹は「むすびちゃん」て言うんだけれど、「むすぶ」という言葉の意味は、みなさんご存知ですか? 「君が代」の歌詞にもある「苔のむすまで」また「海ゆかば」の歌詞にも「草むすかばね」というのがあるでしょ。この「むす」というのは、生き生きと生命力のある、繁茂することを表しているの。そこから「むすこ」「むすめ」という言葉が生まれたの。だから「おむすび」には、心が結ばれるとか、男と女が結ばれるというようなメッセージがこめられているのね。ところが、25年ほど前からコンビニなどで「おにぎり」と言われるようになってしまったの。
だから私は、1週間に一度でもいい、1ヶ月に一回でもいい、心をこめて、愛をこめて、力をこめて、おむすびを結ぶ運動が必要だと思うの。(拍手)バレンタインも、チョコよりおむすびを!と呼びかけたいわ。

■病気を予防する市民運動を!

 日本人は、豆を食べなくなったでしょ。噛まなくなって、顎が細くなり、気力、体力が衰えてきたでしょ。もっと豆を食べよう、と呼びかけるのが、この枝豆の「ビーニーちゃん」。私は、よく子ども達に「頭が良くなり、体が喜ぶ食べ物ってなんだ?」ってきくの。「頭」と「喜ぶ」っていう字をよく見てごらん。ほら、「豆」っていう字が入っているでしょ。「豊かな心」という時の「豊」という字にも「豆」が使われているでしょ。登志子の「登」にも「豆」があるでしょ。これは余談ですが。(笑)だから、この枝豆を使って「豆を食べよう運動」も展開しています。
 国際食メディア会議で聞いたことですが、楽しく笑いながら話しながら食事をするのが「心のジョギング」というの。食卓には心のジョギングがなければならない。よく噛んで食べることを「歯のジョギング」と言うんだって。
 講演する時、私はいつも子ども達に、「野菜を食べると、優しい良い子になるの。お菓子ばかり食べてご飯食べない子は、おかしなことするの。お肉ばかり食べていると、憎たらしくなるの。だから野菜も食べてね。」って、言ってます。そうすると、幼稚園や小学校の先生方から、子ども達が野菜や魚、豆などを食べるようになったという感謝の手紙をいただきます。
 20年前に「バレンタインにはチョコにキスを」と言う本を出版したの。チョコレートが口にやって来るんじゃないの。あなたのお手てがお口に運ぶの。たばこもお酒もそう。だからあなたに責任があるの。こういうことを子どもの頃から教えることが大切。それが医療費を抑えることにもつながるのね。病気を予防するという国民運動を展開しましょう!

■JFJの会員に望むこと

 日本の有力新聞には、「食」のページが少ないでしょ。スポーツが2ページもあるのに。アメリカでは、毎日「食」に関するページがあって充実しているの。日本のテレビ番組には食に関する番組はたくさんあるのに、新聞には少ないと思いませんか? 今こそ新聞に「食」のページが増えるように、私達がんばりましょう。それが収入にもつながるでしょ。
 1978年から、農水省の委員を振り出しに、たくさんの委員を務めてきたけれど、一番権威を持っているのが医者達です。もっと、栄養士や調理師など食の専門家が、そういうところへ出て行くべき。タレントがでるのは、おかしいと思うでしょ。
 アメリカでは、食生活指針委員は5年ごとに新しい人に代わるの。常に新しいアイデア、新しい人材、新しい企画、新しい声が活用されるようにということなのね。この精神が大切なの。日本では、まだまだそういう考え方が遅れているでしょ。アメリカやヨーロッパに遅れているということは、まだまだ、いろいろチャンスがあるということよ。みなさん、がんばりましょう!

(まとめ:村松真貴子)
2000/03/06 第3回ミニフォーラムより