原料にこだわり、「人の手第一」を貫く

経済通信社 門馬恵美氏(寄稿)

 2002年は、日本でアンチョビーの本格的な製造販売が開始されてちょうど50年目に当たる。近年、アンチョビーは塩への本格嗜好、イタリア料理のブームという追い風を受けて2ケタ近い伸びを示すなど、国内で注目の食材となりつつある。今回は潟Lューピーのご協力を得て、国産唯一のアンチョビー製造工場である「光和デリカ」を訪問した。
 光和デリカ(羽賀 勇社長、本社・工場:茨城県鹿島郡波崎町)は1952年、キューピー創業者の中島董一郎氏の援助により設立、1986年に100%キューピー出資の子会社となる。
 冷凍・レトルト・チルド・生食製品など250種を製造販売し、業務用を含むアンチョビーの売上は約5億円。全体売上高の約1/6を占める。
 同社は創業当初からアンチョビーの製造販売を行なってきた。原料となるカタクチイワシは12〜3月の冬場に地元舞浜で水揚げされる体長14cm、重さ25〜32gのもののみ使用するなど、常に均一な品質になるよう生産管理を徹底している。マイワシの漁獲量の減少が
心配される中で、カタクチイワシについては、地元での水揚げが確保できているという。
 生産は@仮漬け A本漬け B処理(皮や骨を取る工程) C缶詰め D注油 E包装・箱詰めの工程を経る。最初の工程となる仮漬けでは、社長自らが選んだというドイツの岩塩を使った食塩水にいわしを1週間漬け込んだ後、頭や内臓を取り除く。さらに塩をまぶし、樽(容量18kg)に詰める。
 次に、室温10度前後に設定された倉庫で約1年間樽詰めのイワシをねかせる。樽の中で発酵・熟成がすすみ、容量が10kgほどに凝縮される。じゅうぶんに発酵・熟成したイワシはBの工程で40名ほどのスタッフの手で三枚におろされ、骨・皮などがていねいに取り除かれて1缶36〜38gの容量で缶に詰められる。そこに油が注入されるが、ここでは創業当初から綿実油を使っている。綿実油はコストが高いし、消費者の嗜好上、オリーブ油ではどうかという声もあったが、「味を変えない」のが方針である。1日300缶が製造されている。
 芳賀社長は「アンチョビーの作業は熟練した腕が必要不可欠。原料となるカタクチイワシの選別や本漬けには長年のキャリアをもつスタッフが作業にあたるなど、常に均一な品質管理を実施している。一方、よりベストなものを生み出すための技術革新、製品づくりに務めている。今後は温度帯に応じた商品開発を行ないたい」と語った。
 今回強く印象に残ったのは、食品加工の機械化が進む中で、原料にこだわり、「人の手第一」を貫く方針である。今後はいかにこれをアピールするかが焦点となりそうだ。

2002/11/20 アオハタ・アンチョビー工場見学会レポート