食生活ジャーナリストの会 第6回勉強会報告
不二家秦野工場見学会
レポート:佐藤達夫
- 平成20年11月26日
- (株)不二家秦野工場
- 参加者:石川、今澤、河上、佐藤、田中、丹羽、村上、村松
(株)不二家は、平成19年に「賞味期限切れ原料(牛乳)をシュークリームに使用している」という内部告発をきっかけに、いくつかの食品偽装が明らかになり、“雪印の二の舞”という状態にまで追い込まれた。
その後、山崎製パン(株)の指導を受けて「再生」をはかっている。まだその“途上”ではあるが、11月26日、食生活ジャーナリストの会による工場見学が行われた。対象は、問題が起こった新座工場(主として洋菓子製作)ではなく、《カントリーマーム》の主力工場である秦野工場(神奈川県秦野市)。
同社では“だれでもモノが言える”社長直轄の食品安全衛生管理部を設け、企業の体質改善に取り組んでいる。また、事件によっていったん取り消された、品質保証の国際規格であるISO9000を取得し直し、米国製パン研究所が開発したAIB食品安全システムの承認を受けるなど、工場の衛生管理にも山崎製パンの技術を導入して、改善策を推進中である。
秦野工場ではいわゆる「見学コース」を設けてはいないため、工場への立ち入りに際しては、当然のことながら、きわめて厳しい服装・持ち物検査が行われる。工場内には、甘ったるい香りが充満し、子供のころに読んだ“お菓子の国”に入り込んだヘンゼルとグレーテルの気分にさせられる。ベルトコンベアに乗って流れてくる焼き菓子を、つい一つ手でつまみたくなるのだが、工場長から「絶対に止めてください!」とキツイ注意が入る。
ハード面での対策としては、たとえば、工場への出入りに前室を設ける、アレルギー成分の混入防止、棚の床上げ、天井や壁の密閉設備の徹底、菓子製造ラインへの異物落下を防ぐためのプロダクトゾーンの設営等々、目に見える改善策が確認できた。
一方、ソフト面では、社内に2組以上の自主監査チームを作り、お互いに監督・指導・意見交換を行いながら、衛生管理や品質向上を目指す等のシステムも取り入れた。これにより、社員自らが発見した改善点もいくつか実現しているという。
食生活ジャーナリストの会が工場見学を実施した日の翌日(11月27日)、山崎製パンは不二家の持ち株を51%に増やした(つまり実質上、不二家は山崎製パンの子会社となる)。
不二家のシンボルマークともなっている「F」の文字は、ファミリア(親しみやすい)、フラワー(花)、ファンタジー(夢)、フレッシュ(新鮮)、ファンシー(高級な・かわいらしい)の5つの意味が込められているのだという。山崎製パンの傘下になってもこの理念を失わず、同時に、いくつかの不祥事の原因の一つであったろう「同族会社にありがちな甘さ」を排して、子供たちの夢を叶える不二家に再生してほしいと、強く感じた。
工場見学のあとに、焼きたての《カントリーマーム》をいただいた。店頭で買うそれとは明らかに異なり、手作り感豊かな焼き菓子であった。工場長の説明によると「昔よりは甘さをグンと控えてあります」とのことであったが、個人的にはまだ“甘さが”少し気になった。