「牛乳生産現場研修ツアー」の報告

・訪問先:コーシン乳業千葉工場、千葉県東部クーラーステーション、石橋新四郎牧場
・平成23年11月10日(木) 9:00~17:00
・参加者:20名
・まとめ:篠原久仁子

東日本大震災、それに伴う福島原発事故では畜産農家も大打撃を受け、牛乳・乳製品の動向が案じられた。そもそも、牛乳は食卓に届くまでに、どのようにして品質や安全性を保たれているのか?このたび、社団法人日本酪農乳業協会のご協力をいただき、生産現場から加工・流通というミルクサプライチェーンを見学、現場の実態を正確に知る機会をいただいた。

■コーシン乳業 千葉工場

まず、食卓に一番近い乳業会社から見学した。衛生面から大人数での工場内立ち入りはできないとのことで、見学者用VTRで、原乳が牛乳として製品出荷されるまでの工程を学んだ。
工場内への受け入れの時点で、抗生物質や細菌検査の他、人間の五感による風味検査など厳しい検査が行われた後、各工程に入る。殺菌方法について、安定供給させるために、高温殺菌を採用させているとの説明があり、低温殺菌との違いについて質問が出た。温度と時間の組み合わせで同等の殺菌をしており、成分などに違いは生じないという。
同社は、県内の牧場で搾乳された牛乳を中心に扱っており、新鮮な牛乳を加工できることも強みのひとつである。

■千葉県東部クーラーステーション

続いて、周辺牧場から集められた生乳を管理するクーラーステーション(以下、CS)へ。CSでは、
受け入れ検査の後、 計量・冷却などすべての工程に管理項目があり、何重にもチェックが重ねられている。ここで万が一、品質に問題があれば、廃棄処分となり、工場に出荷されることはない。
CSは、冷蔵状態を保つ「チルド流通」の徹底に欠かせない場であると共に、季節や天候による牛乳消費の変化に対応して、生乳の需給調整を行う機能も果たしている。

クーラーステーション冷却施設                  (クーラーステーション)               (冷却施設)

■「風土村」にて昼食

地産地消を推進する地域コミュニティーショップ「風土村」に併設された「れすとらん風土村」で昼食。地元食材を使った料理をバイキング形式でいただいた。サラダ、煮物、揚げ物、汁物など、制覇できないほどの品数だった。「食生活」ジャーナリストならではか、皆、お皿いっぱい食し、おかわりをいただく人も多かったようだった。
  
風土村のレストランバイキング               (「風土村」内レストラン)               (地元食材のバイキング)
     

■石橋新四郎牧場

最後に、酪農家のもとを訪れた。牧場に病気を持ち込まないために、シューズカバーを靴につけての見学となった。さらに、牧場入り口には、殺菌のための石灰もまかれており、管理が徹底されていた。
加工・流通過程でも品質を保つための仕組みが徹底されているが、その基本となるのが、乳牛を常に健康な状態で飼養すること。牛の体調や生育ステージに合わせ、グループわけをして管理することで、より細かなケアをされていた。
堆肥舎も見学させていただいた。ブロワと呼ばれる機械で温度をかけながら混ぜることで一次発酵を促進。牛舎においても感じたことだが、驚くほど臭いがなかった。完成した堆肥は、周辺農家へ無償で提供しているそうだ。
最後に、TPP参加交渉表明するか否かの首相発表直前というタイミングもあり、反対の意志が伝えられた。畜産を守りたい、一般の仕事と同じレベルの待遇を実現したいという、強い想いが伝わってきた。

牛舎 搾乳作業                        (牛舎)                  (併設された搾乳施設)

堆肥舎
(堆肥舎)                  

今や、いつでも手に入れられることが当たり前と感じられている牛乳だが、非常にデリケートな生物であることを再認識した。同時に、牛乳の安全性と美味しさを確保しながら、食卓に届けるための仕組みと苦労を知り、大変有意義な一日だった。

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