第21回公開シンポジウム「安全と安心の狭間」の報告

日時:2012年2月18日 14:00~16:30
会場:東京都渋谷区 東京ウィメンズプラザホール
参加者:156名
基調講演:中谷内 一也 氏 同志社大学心理学部教授
パネリスト:浦郷由季 氏 コープかながわ理事・ユーコープ事業連合理事
       松永和紀 氏 科学ライター・食生活ジャーナリストの会会員
コーディネーター:佐藤達夫 食生活ジャーナリストの会代表幹事
総合司会:村松真貴子 食生活ジャーナリストの会会員

■第1部 基調講演

  • 中谷内一也氏 「安全と安心の狭間」
    実態としての安全と主観的な心の問題としての安心は一貫しない。技術的リスク評価は、望ましくない結果の程度とそれが生じる確率が基準となり、モデルやデータから推測される。それに対し、素朴なリスク認知は、恐ろしさ因子と未知性因子といった主観的な二因子を基準とする。つまり、リスク評価は低くても、恐ろしさや未知性因子に合致する要素が強ければ安心できない。リスク管理者と消費者の立場の違いにより、安全が安心につながらないこともある。
    また、信頼の影響も重要である。「主要価値類似性」が信頼に結びつく。科学的なアプローチがなかなか信頼に結びつかないのはそのためである。同じ目線に立って目標を共有していることを確認しあう作業が信頼を回復し、コミュニケーションを改善すると期待される。

■第2部 ディスカッション 「安全と安心の狭間」

<パネリストの活動報告>

  • 浦郷由季氏「消費者は安全情報のどこに不安を感じるのか」
    福島での原発事故に伴い、コープではどのような対応をとったのか、それに対して組合員の反応はどうだったのかをまとめてみた。自主検査や政府の検査結果などの情報は随時知らせてきたが、国への不信感と、放射線という私たちの日常とは縁遠かった未知のものへの不安が大きかった。そこで、コープでは不安の解消のための学習会やリスクコミュニケーションを開催してきた。今後も、あってはならない風評被害を防ぐためにも、わかりやすい双方向のコミュニケーションのとれる情報発信が求められている。

  • 松永和紀氏 「放射能リスクをどう伝えるか」
    今回の事故についても、メディアは売れる情報に走らざるを得なかった。中立公正にとはいえ、情報は商品であり、売れなければ読んではもらえない。これに対する批判はいろいろあろうが、一般の方には「地震、津波、原発事故に続いて、今は第4の災害“情報災害”が起きている」「種々雑多ある情報に翻弄されず、情報を客観的に見よう」というメッセージを送りたい。
    また、放射線のリスクは「安全」「安心」を明確に分けられないところでいろいろな問題が起こっている。安全に関する情報は常に不足しがちである。メディアは、今回の災害でも、放射線の問題だけでなく、食の必要量の確保が脅かされていることなど、広い視野に立った食の安全に対する情報提供をしていかなければならない。

<会場との意見交換>
福島からの参加者による現場からの生々しい声も聞くことができた。また、ジャーナリストを目指す若者の決意表明ともいえる頼もしい発言もあった。その他にも会場から多くの質問や意見が寄せられ、時間いっぱいまで熱心な議論が交わされた。

※第21回JFJ公開シンポジウムの詳細は『報告書』(1部1,000円)にまとめられている。
希望者は事務局まで。

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