・講 師:阿部哲氏(農水省大臣官房広報評価課情報分析室)
ディスカッション進行:小島正美(食ジャーナリスト・JFJ代表幹事)
・会 場:日比谷図書文化館(千代田区日比谷公園1-4)
・参加者:20名
・文 責:小島正美
農水省の阿部氏を迎え、日本の農業がいまどういう状況にあるかについて、お話をうかがいました。分厚い白書を読むのは大変ですが、阿部氏は主に「農業構造の現状と変化」「次世代を担う若手農業者の姿」「先端技術を生かしたスマート農業の現況」「食料自給率の推移など食料消費の現状と変化」の4つの分野にわたり、日本の農業の全体像を分かりやすく解説しました。北海道出身の阿部氏は「日本の農業の未来には希望がある。輸出をもっと伸ばしていきたい」と元気に語っていました。「60分余りで日本の農業の姿が分かり大変役立った」という声があり、大好評でした。
●講演の要旨は以下の通りです。
日本国内で農産物を販売する農家数は133万戸ありますが、10年間で3割減りました(2015年センサス)。133万戸のうち、専業農家は4万4000戸(約3割)と少なく、54%は会社勤めによる収入のほうが農業収入よりも多い第2種兼業農家です。経営・販売別で見ると法人経営体による販売が約2倍に増えるなど法人経営が増えているのが特徴です。1農家あたりの平均経営面積は1990年の約1・4ヘクタールから、2015年は約2・2ヘクタールに増え、経営規模は拡大しています。
農業の担い手は高齢化し、平均年齢はなんと67歳です。新たな担い手が必要な時期に来ています。農業所得は 経営規模でかなり異なり、水田では20ヘクタール以上の面積をもつ農家の平均所得は1967万円と高いですが、水田全体の平均所得は約78万円と低いです。施設野菜の平均所得は約572万円とやや高く、酪農の平均所得は1558万円とけっこう高いです。100頭以上の酪農では平均所得が約4770万円(補助金も含む)と高く、同じ農業でも水田の低さが目立ちます。
農業の総生産額は9・2兆円(2015年)で、ピークだった1984年の11・7兆円よりは低いが、2000年以降は9兆円前後で推移しています。米の消費量が減少しているのを反映して、米の生産額もずっと減少傾向が続いています。
農業の高齢化が進む中、未来の農業を担う若手農家は14万戸あり、その平均面積は7・1ヘクタールと、非若手農家の1・4ヘクタールに比べて広く、若手は経営の規模拡大を積極的に進めている。農業の魅力を尋ねるアンケート調査では、若手農家は「食料供給の社会的責任」を挙げた人が最も多く、将来に向けて頼もしい存在ぶりが分かりました。
食料自給率は38%と依然として低いですが、ロボットやドローンの導入など明るい材料もあります。今後は、国内向けの農業だけでは限界があるため、1兆円(2017年は8000億円)の輸出を目指して、日本の農業を元気にしていきたい。