- テーマ:料理番組の舞台裏
- 講師:中村壽美子会員、インタビュアー:村松真貴子会員
- 平成20年6月23日、18:30~20:00
- 於:東京ウイメンズプラザ会議室
- 参加者:30名
まとめ:佐藤達夫
料理番組はハッピーエンドのドラマである
平成20年度の第1回勉強会は、昭和38年(1963年)にスタートして以来、今年で45周年を迎える長寿番組「3分クッキング(スタート時点では「キューピー3分クッキング」)を立ち上げたテレビディレクターの中村壽美子さん(当会会員)に、料理番組の舞台裏を披露していただいた。インタビュアーは、NHKの看板番組「きょうの料理」のキャスターを長年務めた村松真貴子さん(当会会員)。
日本テレビのスタジオの隣にあった喫茶室のウエイトレス係として採用された中村さんが、局内では「テレビ番組じゃない」と無視されていた料理番組を、ギネスに登録されるほどの長寿番組にまで育てた苦労話を、同業者(?)の村松さんが巧みに引き出し、アッという間の90分となった。
3分の中で何を見せて何を省くか、マヨネーズの登場回数に制限はなかったのか、雑誌の料理記事との決定的違いをどう出すか、「おいしい」という言葉と「簡単」という言葉を使わずに「おいしくて簡単な家庭料理」だとわかってもらうためにはどのような工夫をしたのか、生番組ならではの失敗談、料理の「りの字」も知らない男性スタッフの教育、高名でワガママ(?)な料理家とのつばぜり合い、などなど、「この場でしか聞くことのできない」エピソードの数々に、参加者はメモが追いつかないほど。
圧巻は、料理番組の神髄を問われた中村さんが、間髪を入れずそして何の迷いもなく「料理番組はハッピーエンドのドラマ」と言い切ったこと。経験も知識も表現力も乏しいタレントが、「おいしい」「甘い」「柔らかい」を連発する昨今の料理番組に対する痛烈な批判であり、“ギネスは一日にして成らず”を証明するに足る説得力のある言葉であった。
村松さんが、料理研究家の辰巳芳子さんに、全国放送の本番中にしかられた昔のエピソードを披露し「ハッピーエンドばかりじゃなかったですよ」と軽くツッコムと、「あなたはハッピーエンドじゃなくても、番組はハッピーエンドだったはず。それでいいのよ」にこやかに応じた中村さんに、料理番組裏方としての自負と誇りを感じた。
中村さんは、食卓の上には家族からの無数のメッセージが載っている、と考えている。家庭料理をいかにおいしく食べられるかを追い求めるのが自分の役割でもあり願いでもある、といい、これこそ食育だと主張する。昨今の付け焼き刃の食育とは明らかに年期の入り方が違う。
質疑応答では、料理の台本はだれが・どこまで・どの段階で書くのか、家庭料理と料亭料理の違いはどこにあると思うか、今現役ならどんな番組を作りたいか、食料自給率をどう考えるか、等々、食生活ジャーナリストの会会員ならではの専門的質問が相次ぎ、予定時間をオーバーしての閉幕となった。