・演 題:「神戸の洋食」その起源と発展
・講 師:江弘毅
・進 行:小山伸二
・参加者:オンライン開催29名
・文 責:小山伸二
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西日本支部の勉強会。講師は、長年、メディアの世界で「食」を発信、近年は大学でも食文化の授業をされている江弘毅氏。 江氏の近著『神戸と洋食』をベースに、神戸の「洋食文化」から広がる、街と食の歴史と文化のお話をたっぷりと、お聞かせいただきました。 簡単に、当日のお話の骨子を紹介します。 1 神戸の洋食の現在進行形について ・書籍『神戸と洋食』の書かれた経緯とともに、神戸の「現在」の洋食を語る上で、2つの系統のあることをご指摘。 「オリエンタルホテル」で修行した料理人の系譜と、外国航路の船上料理人の二つの系譜を受け継いだレストランを写真を交えて紹介(帝武陣、sion、ラミ、伊藤グリル、ビストロジロー、グリルミヤコ、グリル十字屋)。 2「神戸開港と洋食前夜」 ・1868年の開港によって、外国に開かれた港町として、都市の性格が決定づけられた神戸。 明治以来に激変した食文化のなかで、「洋食」文化の影響が新しい食材(牛肉や、タマネギなどの洋野菜)の登場秘話。 3「オリエンタルホテルの系譜」 ・神戸の洋食の源流になった、「オリエンタルホテル」のルイ・ベギューの物語(作家キプリングも絶賛したその料理)。 オリエンタルホテルで出されていた「フランス料理由来」のカレーの伝統についての解説。 4「日本郵船〜外国船舶の系譜」 ・ミナト神戸ならではの「船のコックが陸(おか)に上がってつくったレストラン」の伝統について。単なる流行ではなく、外来の食文化が街の中にきっちりと定着して、いまでも当時の味を「守っている」という現象の考察。 5 ジャーナリズムの取材と社会学の「質的調査〜とくに参与観察」 ・アカデミズムにおける学術的な食文化研究(歴史研究)のアプローチと、「街的社会調査」としてのジャーナリズムの交わるところがあるのか、ないのか、について。 新しい書き振り(本の作り方)について、洋食と洋食を取り巻く文物や技芸(メチエ)を、神戸という「場」=トポスを舞台に論じるという、江さんのこれまでのお仕事の集大成のような思いを聞かせてもらいました。 今回も、西日本支部の勉強会として完全リモートで開催しましたが、ネットの映像を通しても、江さんの熱い「語り」は伝わったのではないでしょうか。 とりわけ、食の歴史と現在を、これからもいろんな切り口で紹介していくうえでも、参加者の皆さんに多くのヒントを与えてくれたのではないでしょうか。