・演 題:ゲノム編集フグは日本の水産業の未来にどう貢献するか
・日 時:2022年7月12日(火)19時~20時30分
・講 師:梅川忠典(リージョナルフィッシュ株式会社代表取締役社長)
・進 行:小島正美
・参加者:オンライン参加46名
・文 責:小島正美
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日本国内ではゲノム編集技術を用いて生まれたトマト、タイ、トラフグが市場に登場している。このうちタイとトラフグを開発した京都大学発ベンチャー企業の「リージョナルフィッシュ株式会社」(京都府京都市左京区)の梅川社長を招いて、特にゲノム編集フグの将来性を語ってもらった。
ゲノム編集トラフグは、食欲を抑える遺伝子が不活性化されて食欲が旺盛になり、従来のフグよりも約1.9倍の速さで成長する。出荷期間が短くなれば、生産コストが下がり、高級トラフグの生産性は格段に上がる。言い換えるとより少ない飼料で一人前のフグに成長する新品種の養殖トラフグといえる。
一般に養殖のフグは天然のフグに比べて、肝臓などにある毒物は少ないといわれるが、このゲノム編集フグも従来の養殖フグと有毒部位は同じことが確認されている。
このゲノム編集フグは「22世紀ふぐ」との愛称がつけられ、現在、京都府宮津市の陸上養殖施設で飼育されている。何重にもわたる防護壁があり、海へ逃げ出すことはないという。
その優れた最先端技術に注目した京都府宮津市は 2021年12月、ふるさと納税の返礼品として「22世紀ふぐ」を採用した。梅川社長(1986年生まれ)は昆虫食のベンチャー企業を創業した若き経済人。ゲノム編集タイを開発した京都大学大学院の木下政人准教授らとリージョナルフィッシュ株式会社を共同で起こし、日本の養殖業を飛躍的に発展させるビジネスを実践し始めた。
リージョナルフィッシュは、農研機構・生研支援センター主催のスタートアップ事業の将来性を競う発表会「SBIRアグリフードピッチ」(2022年4月25日)で最優秀賞を獲得し、大きな注目を浴びている。梅川社長は「将来はフグやその養殖技術を海外に輸出できる成長産業にしていきたい」と熱く語った。
ゲノム編集フグの最大の魅力は生産性が格段に高いことだ。もしトウモロコシのような農作物で成長が1.9倍も速ければ、革命に近い。ゲノム編集フグが水産養殖の世界をがらりと変える可能性を感じた。