テーマ:最近の消費者行政と食品表示
講師:森田満樹(消費生活コンサルタント)
平成22年10月19日(火)18:30~20:00
於:東京ウイメンズプラザ(東京都渋谷区)
参加者:26名
まとめ:佐藤達夫
BSE問題をきっかけに平成15年7月に食品安全委員会が発足した。これと似たような経緯で、平成19~20年にかけての食品表示偽装事件や食の安全を脅かす事件が契機になって、平成21年9月に消費者庁・消費者委員会が発足した。発足当時は消費者の関心もきわめて高く、“鳴り物入り”で福島瑞穂大臣が就任した時点で絶頂期に達したといえよう。
しかし、気がつくと発足からすでに1年が経過しているのだが、成果らしい成果はほとんど得られていない、というのが現状である。消費者問題や食品表示問題を、長年追い続けている森田さんに、この1年を振り返ってもらった。
食生活に関係の深い「食品偽装」に限って整理をしてみると、偽装表示はいくつかのパターンに分類することができる。
- 消費者の国産志向に便乗(「鳴門産ワカメ」に中国産混入など)
- 消費者の安全志向に便乗(「有機」「無添加」などの違反など)
- 消費者の鮮度志向に便乗(賞味期限改ざんなど)
- 消費者のブランド志向に便乗(鹿児島県産牛肉が松阪牛表示など)
- 消費者の健康志向に便乗(「口臭をとる」とする食品が公正取引委員会から排除命令など)
これらを冷静に見てみると、偽装表示は数々あれど、「健康への悪影響は見られず、食品安全上の問題はない」物がほとんどであることがわかる。この点を混同すると、問題の本質がわからなくなる、と森田さんは指摘。
一方で、森田さんは、最近の新聞記事を具体例にあげ、報道の在り方にも問題があることにも言及。ジャーナリストの自覚を促した。
また、食品表示に関わる現行法律の複雑さにも触れた。JAS法、食品衛生法、健康増進法不正競争防止法等々が、消費者庁発足に伴って同庁に移管されたのだが、法律が一本化したわけではなく、その複雑さやわかりにくさはいっこうに解決されていないと指摘した。
最終的に、消費者庁・消費者委員会ができて食品表示の議論は活発になったことは確かだが、かえって混沌としてきたというのが、森田さんの分析。その要因の一つとして、食品表示を含む消費者行政が、「政治主導」の名のもとに政治家に翻弄されているのではないかという危惧を、森田さんはもっているという。
真に国民のための消費者庁であり、食品表示であることを実現させるために、JFJをも含めたジャーナリストの役割がきわめて大きいと締めくくった。
その後、質疑応答に入り、いつにもまして活発に議論が交わされた。