・演 題:2023年、Codex委員会はどう変わるか
-持続可能なグローバルフードシステム実現に向けて-
・日 時:2023年3月17日(金)19時~20時30分
・講 師:鬼武 一夫 氏(日本生活協同組合連合会)
・進 行:瀬古博子
・参加者:会場参加12名、オンライン参加35名
・文 責:瀬古博子
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Codex委員会は食品の国際規格やガイドライン等を作成しているが、それは私たちの食生活とどのようにかかわっているか。また、食品流通のグローバル化がますます進展する中、Codex委員会の役割はどのように変革していくのか。
Codex委員会が設立60周年を迎える節目の年に、同委員会に長く参加してこられた鬼武一夫氏に講演していただいた。
■目的は、消費者の健康保護と公正な取引の保証
Codex委員会は、国連食糧農業機関(FAO)と世界保健機関(WHO)が合同で設置した国際的な政府機関。
その目的は、消費者の健康の保護と、食品貿易における公正な取引の保証にある。
現在参加しているのは、189加盟国と1加盟機関(EU)。243オブザーバー(16国連機関、60国際政府間機関、167国際非政府組織)
なんと、世界人口の99%の代表が、Codex委員会に参画していることになる。
■部会で議論し、総会で採択
食品貿易が飛躍的に増加し、今や大量・多種類の食品が、世界中を駆け巡り、日本にも届く。そこで、取引される食品の安全、品質、公正を確保するコーデックス規格等が求められることになる。
Codex委員会は、総会の下に、多くの部会があり、コーデックス規格等はここで案が作成され、最終的には総会で採択される。
採択の際は、合意形成のためにあらゆる努力が行われるが、それでも合意が得られないときは投票になる。
採択された規格は、加盟国が自国の制度に取り入れることが推奨されるが、取り入れなければいけないという義務はない。
■新たな食料源をどのように取り扱うか
最近の動きとしては、新たな食料源と生産システム(NFPS)が取り上げられている。細胞培養食品、発酵由来食品成分、プラントベースタンパク質代替物、海藻、昆虫、3Dプリント食品、微細藻類などが例示されている。今後議論されていくが、規格の策定を行うステップにおいて、複数の部会にまたがるので困難な面があるだろう。
■パンデミックの影響と、Codex委員会のこれから
COVID-19のパンデミックにより、食品の安全や公正な貿易慣行を保証するコーデックスガイドラインの価値が浮き彫りとなった。
パンデミックは、健康、死亡率だけでなく、私たちの生活や仕事のあり方にも大きな影響を与えた。
パンデミックの中であっても、Codex委員会は休むことなく食品安全の備えと対応として、公的取引保証のためのペーパーレス化や食品工場におけるリモート検証・監査などのガイドラインを整備した。
Codex委員会の目的が、消費者の健康保護、公正な取引の保証、それからさらに、環境問題や食料システムの問題に広がるのか、今後の議論が注目される。
以上、コーデックスの最新情報がぎっしり詰まった1時間の講演だった。
続く質疑応答では、「食品表示を輸出促進のために国際整合化する」という最近示された方針に関連し、食品表示に関する質問が多く出て、関心の高さがうかがわれた。
また、日本のコーデックスへの関与を、今後より強化していくべきではないかとの意見も出された。
日本は、省庁の担当者が2年程度で交代してしまうのが課題。日本も、より戦略を練って対応していくことが求められる。