稲作SDGsから米飯食文化の未来を考える
【2023年度第2回勉強会】

・演 題:稲作SDGsから米飯食文化の未来を考える
・日 時:2023年6月26日(月)19時~20時30分
・講 師:たにりり氏(農政ジャーナリスト、おこめみらいラボ代表)
・進 行:畑中三応子
・参加者:会場参加12名、オンライン参加35名
・文 責:畑中三応子
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米の1人当たりの年間消費量は1962年の118.3キロ、1日324グラム(炊くと約650〜740グラムのご飯になる)から、約50キロと半減した。かつては1日3食食べていたが、現在は1.5食しか食べていない。消費者視点から米をテーマに取材活動を続けるたに氏に、この「米離れ」の及ぼす影響、米離れ対策の取り組み事例を解説していただいた。

現在、米の需要は年間10万トンずつ減っている。稲作農家は1965年の5分の1、田んぼ面積は3分の1に減り、水稲農家の平均年齢は男女とも70歳近い。
消費減少の原因は、①食の多様化、②調理が面倒なこと、③糖質制限ばやり、④食の現場と農の現場の乖離、すなわち食に対する関心の低下の4点が大きいと考えられる。

米離れに対し、流通の現場ではお米屋さんがバケツ稲体験指導をして消費者の関心を高めたり、生産の現場では新品種を開発しブランド化を進めたりと、懸命な取り組みを行っている。絶滅したトキの野生復帰と環境負荷低減の稲作をセットにした新潟県佐渡市のように、地域全体での取り組み例もある。
千葉県いすみ市では給食に地元産の有機米を取り入れて地域活性化に成功。給食の話を知った子育て世代がこぞって移住を希望する町になった。また、東都生協は1985年から茨城県JAやさとと「地域総合産直」、地域まるごとの産直で消費者とのつながりを構築し、地域を支援している。近年、東都生協は合鴨農法をロボット化したアイガモロボの購入資金を支援。除草から光合成を抑制する「抑草」という方法に転換し、有機の米作りを応援中だ。

米離れはたんに食の問題だけではない。消費減退の先には深刻な危機がある。大きく挙げると、①中山間地域の人口が減り、地域コミュニティーが崩壊、②防災機能の低下(田んぼはダムとして水害を防ぐ)、③生物多様性の喪失(田んぼには約6000種もの生き物がいる)、④食料安全保障上のリスクである。

それでは私たちがこれからできることは何か? 
現在、全国で米飯給食が行われ、小中学校ではパンのときより明らかに残渣が少なく、白いご飯嗜好が強い。いま10歳から28歳のZ世代は、多くのデータでパンよりおにぎりを好む。このZ世代は、①地球環境を守ろう、②よりよい消費者でありたい、③お互い助け合う生き方をしたいという価値観を大事にする人々でもある。

確かに米消費は半減しているが、若い世代は消費のスタイルも価値観も大きく変わっている。これを見逃してはいけない。実際、全農はZ世代の意識変化にいち早く対応して「田んぼの生きもの調査研修会」を実施している。

これ以上の米の消費減退を食い止めるためには、①米離れの実態を正しく伝えて自分事として捉えてもらい、食べる責任、すなわち食べることで米と地域を支えていこうと考える消費者、②Z世代の意識変化、この2点を育てていくことではないか。ネガティブな話題ばかりではなく、ポジティブな変化を捉えて伝えていくのはメディアの責任と、たに氏は結んだ。質疑応答では活発な議論が交わされ、だれにとっても米は自分事の問題であることをあらためて感じさせる勉強会になった。

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