テーマ:キノコ栽培のいま~研究と工場見学
訪問先:ホクトきのこ総合研究所 赤沼きのこセンター(長野市)
平成22年11月12日(金)10:30~15:00
参加者7名
まとめ:長沢美津子
森の恵みであるキノコは、人工栽培技術の発達によって、周年食べられる品種が増えている。健康志向を背景に、市場も伸びている食品だ。その最前線では、どのような研究がすすみ、どう生産されているのか。ブナシメジで全国シェアトップ、エリンギやマイタケなども生産する、ホクト株式会社を長野市に訪ねた。
ホクト株式会社は、食品容器から出発し、現在はキノコの原種研究から、全国に工場をつくって栽培まで手がける。アメリカや台湾にも進出している。リンゴが赤く実る晩秋の長野での見学会となった。
午前中は同社の「きのこ総合研究所」で、稲富聡・開発研究室長によるレクチャー。キノコの商品化への道のりは、山に入って良い原種を見つけるところから始まり、市場のニーズをにらみながら、品種改良を重ね、工場での栽培ラインをつくるまで。いかに省力化して衛生的に栽培できるかがカギだ。椎茸の価格がキノコ類の中で比較的高いのは、栽培時に人手がかかるという理由だとは知らなかった。また、いまや当たり前に思う真っ白なエノキダケだが、これを1986年、世界に先駆けて開発したのは同社だという。おなじみのブナシメジやエリンギも、いい新品種ができれば置き換えられている。日本人の夢として語られる松茸、西洋でいえばセップ茸などを含め、あらゆるキノコの人工栽培の可能性を研究しているというから、今後も食卓にのぼるキノコの種類は増えていくのだろう。一方でキノコの持つ健康機能についての研究も盛ん。同社ではエリンギの肝障害予防効果やブナシメジの動脈硬化抑制作用などについての研究を進めていた。
午後は、1日にエリンギ9万パックを出荷するという「赤沼キノコセンター」へ移動。<菌>が相手だけに、闘う相手は雑菌で、工場内は立ち入りがエリアによって厳しく制限されている。最終工程のパック詰め以外では、人の手に触れることなくラインが組まれている。全員全身白衣に着替え、工場内を見学した。キノコの培地に使うのは、トウモロコシの芯を粉砕した「コーンコブミール」と呼ばれるもの。これをビンに詰め殺菌した後、キノコの菌を植えて1ヶ月ほど「夏の森」のような環境で培養する。発芽させた後、今度は「秋の森」の環境で成長させる。温度、湿度と光をコントロールされた室内は、365日フル稼働。店頭でみるエリンギがビンの口からニョキニョキと伸びる姿は圧巻だ。最後には、ひとりひとり、ビンからエリンギをもぎ取る「キノコ狩り」も体験し、一日の見学を終えた。