・演 題:広がるフードバンク、活動のいま
・日 時:2024年2月15日(木)19時~20時30分
・講 師:米山廣明・一般社団法人全国フードバンク推進協議会代表理事
・進 行:大村美香
・参加者:会場参加10名、オンライン参加25名
・文 責:大村美香
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貧困問題が深刻になる中で、団体数が増え、注目が高まっているフードバンク。日本国内でのフードバンク活動の現状と課題について、全国フードバンク推進協議会代表理事の米山廣明さんにお話しいただいた。
フードバンクとは、包装の破損や余剰在庫、印字ミスなどの理由で、流通に出すことができない食品を企業から寄贈してもらい、必要としている施設や団体、困窮世帯に無償で提供する活動。
日本における2021年の子どもの貧困率は11.5%。9人に1人の子どもが相対的貧困に該当する。こうした世帯の子どもは、学習・進学・医療などの面で極めて不利な状況に置かれている。将来も貧困から抜け出せない傾向があるため、他者からの支援が重要。
全国フードバンク推進協議会は、2015年に設立。全国のフードバンク団体の活動支援や新規立ち上げ支援、政策提言、広報活動、寄贈食品のマッチングなどを行っており、フードバンク活動を普及推進し、食品ロス削減と子どもの貧困問題解決を目指している。2024年2月時点で59団体が加盟。
最大のキャンペーンとしては、「フードバンクこども応援全国プロジェクト」がある。給食のない夏休みや冬休み期間中に、子どものいる困窮世帯への食料支援を全国的に拡大するために、全国の加盟団体と協力して実施している。これまでに6回。支援した世帯は1回でのべ38000世帯と、現在高止まりの状況。
国内のフードバンク団体数は2023年11月時点で252団体。増加傾向で、かつ増えるスピードが増している。食料の取扱量は総計でおよそ8千から1万トンとみられる。物価高騰やコロナ禍で、約8割の団体では困窮世帯からの食糧支援要請が増えている一方、約3割の団体では、食料の寄贈が減っている。
フードバンク団体が食品取扱量を増やすことができていない原因には共通の課題がある。①事務所・倉庫・配送用車両などのインフラ整備。特に都市部では、活動が拡大するほどランニングコストが増える。②人手不足③運営費の不足④ノウハウの不足⑤認知度不足⑥食品寄贈に伴う法的リスク⑦行政との連携不足。特に①から④が重要。国内のフードバンクを海外水準に引き上げるには、運営体制の強化が不可欠となっている。食品ロスと福祉の間をつなぐのがフードバンクの役割だと考えている。
フードバンクは地震などの災害支援でも力を発揮する。協議会は1月の能登半島地震でも自治体からの要請に基づき、加盟団体と共に支援を行った。今後の生活再建に向け、中長期的な支援を行うため、現地に拠点を設けてスタッフを置き、引き続き取り組んでいく。大規模災害が多発する日本で、常に食品を備蓄し、調整や分配を行っているフードバンクは、災害支援で大きな役割を果たせる可能性がある。
フードバンクに対する現状の公的支援には、課題がある。複数の省庁から補助事業が分散して公募されているため、フードバンク側が把握しにくい。各省庁別々のテーマでの補助で、対象が限定的で使いにくい。また補助事業の期間が短く、その都度申請と報告作業が必要。日常的な活動に加えての業務で現場は忙殺されてしまう。地方自治体を介して補助金をフードバンクに交付する事業は、自治体が手を挙げないと活用できない実情がある。また補助事業の内容が現場のニーズと合っていない事例がほとんど。公的支援が、団体の長期的な成長につながっていない。
これらの課題を解決し、団体の成長を促すには、基金の設置が必要だと考えている。事業を一本化し申請や報告の負担を軽減でき、複数年の支援を見込めるほか、現場のニーズに合った支援が可能になる。
講演の後の質疑応答では、参加者から「子ども食堂やフードパントリーとの連携は?」「食料支援を必要とする人の情報はどのように得ているのか」など質問が次々と寄せられ、活発な意見交換が行われた。