・演 題:「もったいない」を「おいしい」に変えて3年目。
料理研究家が考える、未利用野菜の活用と農家支援
・日 時:2025年2月27日(木)19時~20時30分
・講 師:あすまるさんキッチン(料理研究家ヤミー、ほりえさわこ、中元千鶴)
・進 行:吉田佳代
・参加者:会場参加20名、オンライン参加33名
・文 責:吉田佳代
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●プロフィール
あすまるさんキッチン
https://www.instagram.com/asumarusun/
2022年7月のコロナ禍に、料理研究家(ヤミー・ほりえさわこ・中元千鶴)で結成したアップサイクル事業チーム。生産者支援とフードロス削減を目的に、規格外などで出荷されない食材を買い取り、日持ちのするおいしい食品に加工。フードイベントで商品を販売するほか、レシピ開発、講演、料理教室などで生産者や企業、消費者が個々で実践できるノウハウを提供し、メディアでも話題に。2024年3月にキユーピー株式会社の社会貢献活動「Q Peace」の2024年度支援団体に選定。農林水産省「みどりの食料システム戦略」に携わるほか、活動の場を広げている。
<講演概要>
●私たちがアップサイクル事業を始めたわけ。
料理研究家を生業にしていると、食材について毎日考える。特に、普段お世話になっている農家さんがどう生計を立てているのか気になることが多い。農家との付き合いのなかで、いわゆる、流通にのらない規格外野菜以外にも、農家自体が備蓄している野菜の廃棄や、納得せずに流通にまわさずにいる「未利用野菜」の存在があることを知った。それらを合計すると20%から30%にも上るという。
料理研究家としての「野菜を丸ごと食べきる技」や「野菜を上手にもたせる調理」などを駆使して、なんとか農家支援ができないものかと画策したのがきっかけ。
特に、埼玉県の小川町で無農薬農業を営む「横田農業」と関わりが深かったことから、まずは横田さんをサポートすることからスタートした。
●日本の現状や2021年の状況
ウクライナ侵攻、コロナ禍、自給率の低下など、日本の食の危機を身を持って感じたこと。統計資料なども表示。
●農家のサポート方法の説明
普段は、ある日突然農家から連絡があり、未利用野菜について告げられる。野菜の状態や量を確認し、双方で調整を始める。
処理が可能な量を計算して値段を交渉し、買取る。送られてきたら、下処理を経て瓶詰めほかの保存食に替え、保管するいつ在庫が確保されるか確証がないので、定期的な販売は難しい。在庫の目処が立ったら、イベントなどで販売することで収益になる。
効率が悪いのは承知しているが、効率を重視するものではないし、現状はこれしか方法がない。そもそも、未利用野菜は出ないにこしたことはないのだ。
●1年目、2年目、3年目の主な活動
時系列で、写真を紹介しながらの説明。
1年目は突然の依頼に対応するのに困難を極めた。特に、遠方からの野菜の発送は重量も梱包も難しく、ぎりぎりの状態の野菜などは、夏季には傷みもあり、農家側の対応ノウハウも重要だと気付かされた。
だが、2年目から3年目にかけては次第に変化が。メディアに取り上げられるほか、講演やノウハウについての料理講習会の依頼などで別収益が派生したほか、企業(キューピー株式会社)の資金サポートによって、マンパワーも確保されたことも大きい。農水省のプロジェクトでレシピ提供の依頼があるなど、1年通して未利用野菜を扱っていることで蓄積されたノウハウを活用する人々が出てきた。当初数軒だった農家の無料相談も、20軒ほどにまで増えた。完全持ち出しだった資金体系が、赤字を解消し、微々たる金額だが黒字に転じた。これは3年続けた成果であったと感じている。
●現時点で実現できたこと
ボランティアでも増え、商品製造のプロのサポートのおかげで、生産効率はアップした。
ロゴマーク、商品ラベル、看板、チラシ、ショップカードなど、販売ツールも使いこなせるようになり、ホームページやYoutubeも開設。
また、工場での生産テストを行い、大量生産に向けて準備を行なっている。
当初より、確実に多くの「もったいない食品」の買い取りができるようになり、農家支援につながった。
●気づいたこと、課題
一方で、自分たちで取り組んでみて、大喬が取り組まない理由がわかった。
そもそも、不揃いや、傷のある野菜は加工しづらく、工場の生産ラインに乗らない。このため、大量生産は難しい。つまり、手間がかかる。野菜の個性を見極め、手作業で加工する必要があるため、パートさんの対応は難しく、教育の経費もかかる。
一番の問題は、気候はコントロールできないため、いつ何がどれだけロスになるかわからない点である。工場は基本的に1カ月以上前からスケジュールが決まっており、急に野菜が届いても対応できない。このため、生産計画が立たない。また、小ロットには対応できないという点も大きい。
●今後の展望
・もっとたくさんの未利用農作物を買い取り、活用したい
・農家だけでなく、漁師、酪農家など日本の生産者を幅広く支援したい
・レシピ開発などで生産者や食品メーカーの役に立ちたい
・多くの人に現状を知ってもらうために、もっと発信したい
・収益化、法人化して新たなビジネスモデルを創造し、全国に支部をつくり広げたい
・未利用食品と企業、個人商店、消費者のマッチングシステムを作りたい
・地域の自治体と関わり、地産地消で野菜を買い取って地域ごとのマルシェを定期的に開催したい。