「大きく変わるアメリカの食教育」の報告

・講師:橋本玲子氏(管理栄養士・株式会社Food Connection代表)
・平成23年10月3日(月)、18:30~20:00
・於:東京ウィメンズプラザ会議室
・参加者:40名
・まとめ:佐藤達夫

 食環境がめまぐるしく変わる昨今、国民の健康増進は、世界各国で国をあげての運動になっている。アメリカではオバマ大統領夫人・ミッシェルさんが、子どもの肥満撲滅運動の先頭に立ち、特に貧困層の子どもたちにまで手を差し伸べた“Let’s Move!”運動を積極的に推し進め、成果をあげつつある。こうした海外の食情報に詳しく、また国内ではJリーグや社会人ラグビーチームの栄養指導など、様々なジャンルで食をサポートしている管理栄養士の橋本玲子さんに、大きく変わりつつあるアメリカの食教育の現状を報告していただいた。この勉強会の直前までアメリカの栄養士学会に参加していた橋本さんから、最新のアメリカ食情報も伝えられた。

■明確な目標とそれを裏打ちする法律

 “Let’s Move!”は、2010年2月にミッシェルさんが立ち上げたアメリカの子供たちの肥満撲滅キャンペーン。その年の12月には、全米の学校給食を改善する法案が成立、さらには、翌年(2011年)の「アメリカ人のための食生活指針」の改定へと、広がりを見せている。
 “Let’s Move!”の行動計画は次の4本の柱から成り立っている。

  1. 保護者に対するサポートの強化
  2. 学校の食を取り巻く環境の改善
  3. 生鮮食料品を入手しやすくする
  4. 活動的になれる環境を整える

 それぞれの柱に対して、明確な目標が定められていたり、それを達成するための法律が整っていたりする点が、アメリカらしいところ。また、それらの実現のために、食品メーカーやスーパーマーケットなどが積極的に参加を表明し、具体的な活動を展開し始めている点に驚かされる。
 さらには、人気歌手:Beyonce監修による「Move Your Body」ダンスを発表して、子供たちが自主的に楽しく参加できる工夫も凝らしてある。
http://bmr.jp/video/detail/00000000000000005157.html 
で見られるが、日本のラジオ体操とはまったく違うことが一目瞭然。

■ごくごくシンプルな「My Plate」

 “Let’s Move!”は、スタートしてからまだ1年半しか経過していないのだが、アメリカ国内ではすでに大きな成果を上げつつある。その理由として、肥満人口の増加(成人男性の7割、女性の6割、子どもの3人に1人が肥満または過体重)や、医療費の増加(肥満関連の医療費が)全体の17%を占める)など、日本とよく似た状況が上げられている。
 しかしそれだけではなく、アメリカには日本と異なる切迫した理由もある。17歳~24歳のアメリカ人の4人に1人が、過体重が理由で、軍隊に志願しても不適格となる事態が生じているという。これは国家の安全保障に対する危機だと指摘されているのだ。国をあげて真剣にならざるを得ない。
 “Let’s Move!”の目玉となっているのが、「My Plate」だ。英語ではあるが下記で見ることができる。
http://www.letsmove.gov/blog/2011/06/02/usda-unveils-new-simple-tips-stay-healthy-active-and-fit
My Plate           「マイプレートの具体例(資料提供:橋本玲子)」

 一言でいうと「食事の半分を野菜と果物に」となる。これまで、アメリカの食事指針はフードガイドピラミッドであったが、これからはずっとシンプルな「My Plate」に統一されるようだ。「どんな人にでもわかり、かつ、だれでも実践できる、という食事指針は、これくらいシンプルでなければならないでしょう」と橋本さんは指摘する。
 「アメリカの栄養士は、国民を健康にするために誇りを持って仕事している」という、橋本さんの最後の言葉が印象に残った勉強会であった。

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