日 時: 2013年2月24日(日)13:30~16:30
会 場: 東京ウィメンズプラザホール
参加者: 158名
基調講演: 井出留美 氏 セカンドハーベスト・ジャパン広報室長 / 女子栄養大学講師
パネリスト: 橋本伊津美氏 食生活ジャーナリストの会会員
近田康二 氏 食生活ジャーナリストの会幹事
コーディネーター: 佐藤達夫 食生活ジャーナリストの会代表幹事
総合司会: 佐々木仁子 食生活ジャーナリストの会会員
■基調講演
- 井出留美氏 「捨てられる食べ物」~なぜこんなにも捨てられるのか?利用できないのか?~
世界では、食品の生産量の約3分の1に相当する、年間13億トンもの食品が捨てられている。先進国でも発展途上国でも食品ロスは発生しており、先進国では流通に近いところで、途上国では生産に近いところでロスが発生しやすいという現状がある。日本では、米の年間生産量とほぼ同量の500~800万トンもの食品ロスがある。
食品ロスの要因はいろいろあるが、商品の包装や表示、規格などの理由で、品質上は全く問題がないのに売ることができなくなったもの、大量生産によって余った野菜、イベントや展示会などで残ったサンプルなどを、食べ物に困っている人へつなぐ活動が行われている。この他にも、企業や農家、家庭から余った食べ物をいただき、福祉施設や生活困窮者に届けるのが、フードバンクの活動である。
世界のフードバンクはアメリカが発祥の地で、今では約30か国に広がっている。日本では、2002年3月に設立した「セカンドハーベスト・ジャパン」が最初で、現在は約30余りの団体がある。フードバンクでは、被災者の支援活動も続けている。また、企業や施設、行政の立場からも、フードバンクの活動は、廃棄コストの削減や社会貢献、食品ロスの削減により環境への負荷が減る、社会的弱者の救済や生活保護の予算の削減、などのメリットもある。
今後の可能性としては、生産、流通販売、外食産業などの取組とともに、備蓄食品については、私たち一人ひとりが、賞味期限を切らすことのないようにすることも重要である。
■パネルディスカッション
<パネリストの報告>
- 橋本伊津美氏 「捨てられる食品を減らせるか? 流通業界の取組」
メーカーは製造日から賞味期限の1/3を過ぎる前に、小売の店舗に商品を納入、小売は賞味期限の1/3を残して、生活者に販売する、“1/3ルール”による返品累計は2010年度で1139億円にものぼる。小売は、欠品による売り上げ機会の損失を防ぐため、必要なときに必要な数量を確実に納品することを卸に求め、卸はいつでも対応できるよう“安全在庫”を抱える。
この1/3ルールの商習慣を見直し、“まだ食べられるのに捨てられる”食べ物の廃棄を極力減らそうという動きが出てきている。今後は、「製・販・配」がそれぞれに納得できる道を模索していくであろうが、食品廃棄のリサイクルだけでなく、食品廃棄の発生の抑制が求められている。また、外食産業や生活者の側の意識の改革こそがキーポイントとなる。 - 近田康二氏 「捨てられる食べ物 食品残さの飼料利用の現状」
食品残さを含めた産業資源としてのバイオマスは、付加価値の高いものから順に再利用すべきとの考え方がある。つまり、付加価値の高い順からFood(食料)、Fiber(繊維)、Feed(飼料)、Fertilizer(肥料)、Fuel(燃料)の順で、近年、この3番目の飼料利用が推奨されてきている。これには、いくつかの背景があるが、食品残さを家畜用飼料として利用するエコフィードは、安全性の担保のために2006年に制定された「食品残さ等利用飼料の安全性確保のためのガイドライン」などの基準に沿った製造と利用が進められており、エコフィード給与豚のブランド化などの動きも出てきている。
飼料自給率26%という状況の改善のためにも、エコフィードの活用は大きなカギを握る。
<会場との意見交換>
会場からは「フードロスを減らすには、消費者一人ひとりの意識も重要」「もっと合理的な食教育が必要なのではないか?」「規格や安全性の問題は、ジャーナリストとして注視すべきでは?」「国の施策や地方自治体の先進的な取り組み例はないのか?」などの声が挙がり、生産、流通、販売、消費者、そして、国や地方自治体など、それぞれの立場からの課題について、会場との活発な意見交換が行われた。
この問題は非常に大きく、十分に深く掘り下げるところにまでは至らなかったが、「ほんの少しでも私たちが動けば、世の中も動いていくのではないか?」そう感じることができた。
※第22回JFJ公開シンポジウムの詳細は『報告書』(1部1,000円)にまとめられている。
希望者は事務局まで。