・講 師:大澤郁朗氏(東京都健康長寿医療センター)
・日 時:2016年8月29日(水) 19:00~20:30
・会 場:東京ウィメンズプラザ第2会議室
・参加者:50名
・まとめ:小島正美
東京都健康長寿医療センター研究所研究員の大澤郁郎さんの要旨
なぜ、私は水素を研究するのでしょうか。それは水素がこれまでの研究でさまざまなすぐれた作用をもっていることが分かったからです。私が筆頭執筆者となって、2007年、水素分子が抗酸化作用を発揮することで、脳の虚血・再灌流(かんりゅう)障害を抑制するというマウスの実験結果を論文にしました。これが大きな注目を浴び、以来、水素の研究は世界中で始まりました。
水素分子は、高い透過力と速い拡散速度で細胞の隅々まで到達します。その際、活性酸素の働きを抑制します。ただ、活性の弱い過酸化水素や一酸化窒素のような活性酸素とは反応しません。その意味では安全性が高いと言えます。動物実験では、いろいろな効果が証明されています。たとえば軽い大動脈閉塞のラットに水素ガスを吸わせると梗塞部位が減少するという結果が得られています。水素ガスの吸引では肝臓や心臓での虚血・再灌流障害を抑制することも分かっています。また、緑内障のラットでは網膜の退縮を抑える効果もありました。
さらにマウスの実験では水素水の投与で記憶障害が改善される結果も得られています。
動物実験だけでなく、パーキンソン病の治療では順天堂大学で人の試験も進められています。いま大規模な試験が進行中のため、まだ結論を出す段階ではありませんが、一定の効果が認められ、実用化にも期待がもてます。
そうはいっても、市販されている水素水には水素の濃度が低かったり、大げさなうたい文句の商品もあり、注意が必要です。
水素水が万能かのような宣伝もありますが、そんなことはありません。がんに効くというデータは現時点ではありません。リウマチに効くかどうかは、その可能性はありますが、まだデータは不十分です。肩こりに効くかもデータがなく、確かなことは言えません。風呂で水素を発生させる商品も売られていますが、肌
によいかはエビデンス不足です。アトピー性皮膚炎の治療は可能性があるとは思いますが、これもデータ不足です。とにかくよくエビデンスを確かめて判断しましょう。