食のジャンルにおける新聞記者の役割

朝日新聞社学芸部記者 長澤美津子氏(JFJ会員)

 昨年の4月から東京本社の学芸部で「家庭面」を担当しています。このところ、セーフガード、狂牛病、食品表示、デフレによる値引き問題など、世間を騒がす大きな問題が家庭面を賑わしています。これらの問題を、生産から消費まで「串刺し」にしてとり扱えるところが、家庭面の特徴だと感じています。
 家庭面というと、読者は50歳代から60歳代の女性ばかり、という印象を持たれていますが、テーマによってはかなり幅広い読者が読んでいることがわかります。例えば、性に関する特集などを掲載すると、10歳代の若い男女から携帯電話を使ったメールが編集部へと入ります。視点を変えればいろいろな読者に読まれるというのも家庭面の特徴だと思います。
 家庭面は日常茶飯のことを扱うので、世相を反映しないように思われがちですが、けっしてそんなことはありません。朝日新聞に「料理メモ」という小さな欄があります。今晩のおかずが書かれている実用記事なのですが、この欄でも、長い時間の幅で見てみると、世相を敏感に反映していることがわかります。アジアの文化が見直された時期に合わせてピリ辛料理が増えてきましたし、核家族・少子化が増えるにつれて、料理の材料が4人前から2人前に変わったりしています。私はこれこそ「ニュース」なのだと思います。
 今は健康ブームです。家庭面のちょっとした健康記事が読者の健康食品購買意欲をかき立てることも少なくありません。健康にいいという食品を食べ過ぎて肥満し、生活習慣病を悪くしてしまう人も出始めています。ホンの小さな記事でも細心の注意と緻密な取材が欠かせないことを痛感します。
 これからは「健康」がとても大きな意味を持つようになると思います。そんな時代だからこそ、常に「家庭面ならでは」という視点を忘れないように記事作りをしたいと思っています。

(まとめ:佐藤達夫)
2001/03/20 第11回JFJ公開シンポジウム 21世紀の「食」の仕事より