料理番組「どっちの料理ショー」の人気の秘密

株式会社ハウフルス・プロデューサー 津田 誠氏

 「どっちの料理ショー」は、人間だれでも食事をするときに2つくらいは食べたいものがあって、どっちにしようかをいつも迷っている、というところがベースになってできあがった番組です。食べ物に関する、この基本的な迷いをとことん追求してみよう、というのがスタートでした。
 そのためには、司会者が食べ物や食材に関して長々とウンチクを語らないこと。そして、なんだかわからないけど、ゲストがだんだん洗脳されてきて、最後にはどっちも食べたくなる、というような構成にしました。ごくシンプルなアイディアなのですが、それだけに、登場する素材には徹底的にこだわっています。
 外部のリサーチャーを使わずに、番組関係者が独自の取材網を駆使して「特選素材」を探してきます。特選素材を探していくうちにわかったことが「日本にはとてつもなくすばらしい食材がある」ということです。漁師さんであれ、お百姓さんであれ、それこそ命をかけておいしいものを作っている人たちが、全国各地にいることを、番組制作を通じて、はじめて知りました。
 「どっちの料理ショー」のもう一つの楽しみは「勝ち負け」です。これも、人間のごくベーシックな楽しみです。テレビ番組とはいえ、真剣勝負ですから、スタッフはもちろん、参加するゲストまで、全員が熱くなります。その熱気が見ている人にも伝わるのだと思います。
 じつは、番組関係者として一番多く受けるのが「負けたゲストは本当に何も食べられないの?」と「負けたほうの料理はどうするの?」という質問です。「負けたゲストは本当に空きっ腹で帰ってもらい、負けたほうの料理や食材はすべてスタッフの口に入ります」というのがお答えです。

(まとめ:佐藤達夫)
2001/03/20 第11回JFJ公開シンポジウム 21世紀の「食」の仕事より