基調講演の概略

大本幸子氏(食生活ジャーナリストの会会員・フリーライター)

 農家は高齢化と後継者不足で悩んでいますが、安全で安心な米作りを目指し、対策を立てて農業をしています。そこに農家の底力もみました。集落全体で行う集落農業や、若者の請負制度、休耕田を集落として活かす方法、知恵の賜物による早場米への取り組みもありました。北海道中富良野では、消費者からの声で現場が動き、減農薬栽培に取り組んでいます。

 石垣島は日本の最南端の米作地帯で、二期作が可能です。平成5年の冷害で、岩手が種籾さえ取れない状況の時、石垣島は岩手の田植えまでにと米を作り種籾を送りました。岩手県は石垣島に感謝し、「かけはし」という名の米を作りました。逆に石垣島が台風被害にあったとき、岩手県からはすぐに種籾が送られ、石垣島では無事に田植えができました。かけはしを使って作った石垣島・請福酒造の泡盛、南雪のボトルには、この話が書いてあります。

 いまや個性化の時代です。佐賀県では農薬や化学肥料を使わず、川の両脇の葦を堆肥にし、古代米を作っています。古代米はミネラルが豊富な米で、スローフード大賞を受賞しました。コシヒカリ全盛の現在、日本にあった古代米に注目し、環境にやさしい農法で全国の消費者に提供しました。

 では、食べる側は何を考えればよいのでしょう。お米を知ることです。炊きたての白いご飯ほど美味しいものはありません。消費が伸びないのは米の味が悪いとか、宣伝が足りないからでなく、パンも麺も美味しいからです。米の消費宣伝をする前に、子供たちに正しい箸の持ち方や茶碗の使い方を教えるべきでしょう。米の基本は家庭で炊いたごはんであり、炊いたごはんの基本は茶碗と箸なのです。米がきらいなわけではなく、子供達は基本を教えれば好きになってくれるのではないでしょうか。

(幹事 大森良美記)
2005/03/03 第14回JFJ公開シンポジウムより