パネルディスカッションの概略

 シンポジウム第2部のパネルディスカッションでは、料理研究家の清水信子先生、米のソムリエで米小売店「スズノブ」を経営する西島豊造さん、宮城県の米生産者の堀米荘一さん、ジャーナリストの大本幸子さんが「日本の米をどうする?」をテーマに意見交換した。コーディネーターは島崎幸子代表幹事。

 「日本人1人が年間食べる米は、年間61キロ。10年前に比べ、6〜7キロ減っている。米が好きなはずの日本人が米を食べなくなっているのはどういうことなのか?」。これが、今回のシンポジウムの大きなテーマ。この問いかけに、各氏は日々の仕事を通じて感じていること、危機感を抱いていることなどにも触れ、活発に議論した。

 西島さんは、「料理番組では、ただ単に米3合、米2合というだけ。寿司に合う米、チャーハンに合う米、弁当に合う米など、米の味や特徴もさまざまなのに、料理のテレビや本が単に「米○合」とだけしか表現しない今の現状では、米の消費にも限界がある。100人の人がいれば、100種類の好みがある。コシヒカリは甘くて粘りもあっておいしいが、ほかにも特徴ある米はたくさんある。コシ一辺倒ではなく、好みに合わせて好きな品種をグラム単位で買えるようにならないと、米は売れるようにならない」と、小売店の発想の転換が一番の課題だとした。

 清水先生は、「米○合と言っているのは私たちだからどきっとしますね」と笑いながらも「味覚がおかしくなっている若い人たちには、米の味の違いが分かる以前に、家庭の味、手作りの味を分からせなければいけない。食べるものは家庭で作る、自分で作るということを定着させる必要がある。米の問題は家庭の食生活が崩壊していることから起こる」とし、家庭での食事のありかたを見直す必要があると強調した。

 生産者の堀米さんの住む角田市は、東京・目黒区の小学生との交流を長年続けている。掘米さんはこうした経験から「一度米作りを経験した子は、ご飯粒を茶碗に残さないし、多少わらが入っていても全部食べてしまう。米の輸入自由化の際も、子どもたちは、米を作ってくれる人がいるのだから何とかしなければならないと言い出した。米を育てて初めて食べる意味が重みを持ってくる。小売店には、ただ米を商品として売るだけではなく、生産のようすや生産現場の香りまでも、伝えてほしい」と訴えた。

 島崎コーディネーターは、「ある調査では、家庭の子どもの朝ご飯が菓子パンやジュース、プリン。お父さんはバナナ。米なんて入っていない。米の問題を考えると、家庭の食事がきちんとしていることが大前提になる」とし、「米は米だけの問題ではない。家庭はもちろん、環境、農業などすべてを包括する問題だ」と締めくくった。

(幹事 近藤真規記)
2005/03/03 第14回JFJ公開シンポジウムより